私が30歳代のころ勤めていた税理士事務所の税理士先生は、50手前にしてようやく税理士試験5科目合格し晴れて税理士登録をした先生でした。
高校卒業後一般企業に就職したそうですが、そこで経理の仕事をしているうちに自分でもできるんじゃないかと思い、税理士事務所へ転職し、そこから勉強の日々が始まったそうです。
20年以上かかって税理士試験5科目全部合格したそうですが、先生は税理士になると決めた時にはすでに家庭があってお子様もいたこともあり、勉強にあまりお金をかけることができず、試験の直前対策のみ予備校に通いほぼ独学に近い状態で受験をしていたそうです。最初の3科目までは順調にとれていたみたいですが、そこからが長く何年かは受験もしなかったと聞きました。
それでもようやく税理士試験を突破し晴れて税理士登録をし事務所を開業した時にはもう50歳。まわりの先生と税理士としての経験は全然違います。でもその先生は、
「自分はほぼ独学で税理士になった」
というプライドが強く、
「●●先生は、大学院に進んで科目免除で税理士になった人だから」
「●●先生は税務署OBだから慣れた税理士だから」
などとよく言っていました。それは、ひがみなのかプライドなのかわかりませんでしたが、、、口癖のように、近隣の税理士のことを言っていました。
ただ、仕事は完璧の先生だったように思います。税務調査があった時も、開業から今までほぼ是認で修正申告をほとんど出したことがないというのが、税理士事務所の自慢でした。
そんなときにあった税務調査で、とうとう指摘されたんです。修正申告の税額が数百万単位になるような指摘でした。私は税理士事務所の落ち度ではなく会社の落ち度だからそのまま修正申告を出すと思っていたのですが、先生はなんと「税務署OBの税理士先生」になんとかならないか相談したのです。今までさんざん努力せず税理士になった科目免除や税務署OBの先生の悪口を言っていたのに…ちょっと唖然としてしまいました。
その税務署OBの税理士先生に相談するために接待らしきお食事会まで用意して。なぜかそのお食事会の席に同席させられたのですが、その席で、事務所の中では自慢だらけだった先生が税務署OBの税理士先生のことを持ち上げてヨイショヨイショしている姿、ちょっと引いてしまいました。
うちの事務所の自慢の「税務調査でほぼ是認されてきたので、修正申告もほぼ出したことはない」ということは、税務調査で指摘されてたことに対して、税務署職員との駆け引きなどの対応をほぼしたことがないということだったのです。その税務署OBの税理士先生に
「●●について指摘されたんですけど、どうしたらいいですかね?このままだと●百万円の税額になってしまうんですけど…」
などなど。そしてそのあとは、その税務署OBの税理士先生のアドバイス通りに進め修正申告書を提出し終わったのですが、わたし的にはかなり引いてしまいました。
私は税理士になりたくて税理士事務所に勤めていたわけではないので、その後転職し今は一般企業の経理として仕事をしていますが、もし私が税理士さんを選定する立場になったら、絶対開業してからの年数があってさらに経験豊富な税理士さんを選びます。
税理士さんって事務所の中でも外でも「先生」って呼ばれて事務所の中では特に偉そうにしていますが、結局は経験と人付き合い・交渉術にたけている人が企業から見たらいい税理士さんです。勉強ばかりして現場の経験がほとんどなく、税務調査で指摘されてもすぐに対応することができず、ほかの税理士先生にアドバイスをもらってから対応するような税理士さんには絶対依頼しません!!