社労士の方たちに、事業における悩みについてアンケートを実施すると、約9割の方が「新規顧客獲得」と回答しています。そこで、今回は、社労士にとって、最も効果的な新規顧客の獲得方法、「セミナー開催」について、具体的なやり方をお伝えしていきます。
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最近は、ウェブマーケティングや動画による集客に取り組む人が増えてきてはいるものの、士業やコンサルタントなど、いわゆる先生業の場合、見込客をセミナーに動員して、信頼してもらい、契約につなげるというアナログな手法が、簡単で即効性があります。とはいえ、セミナーは新規顧客獲得にはつなげやすいですが、そのセミナー自体への集客はもちろん必要になります。
セミナー集客のために、準備しなければならないことは次の5つです。
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1.コンテンツ(セミナーの内容)
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2.コピーライティング(セミナー告知の文面)
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3.見込客リスト(セミナーを告知する相手)
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4.広告手段(どんな媒体通じて告知するのか)
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5.受け皿(申込受付の方法や申込者への対応)
この5つ、すべてをしっかりと準備することで、社労士のセミナー集客はとてもラクになります。ここからは、5つの項目それぞれを詳しくご説明していきます。
1.コンテンツ
当然ですが、これが最重要です。いくら見込客にセミナーの告知が届いたところで、セミナー内容が魅力的でなければ誰も申込みません。しかし、現実には、集客が難しいであろうテーマでセミナーを開催している社労士がたくさんいます。なぜ、このようなことが起こるのか?
それは、見込客(ターゲット)の視点が欠けているからです。
セミナーと聞いて、“何を話そうか?”そう思ってしまったあなたは要注意です。あなたが、“話したいこと”=相手が“聞きたいこと”とは限りません。むしろ、あなたが“話したい”と考えている内容には、“売りたい”という心理がはたらく為、売り込み臭の強いコンテンツになってしまい、敬遠する人の方が多いかもしれません。
例えば、講師の経歴や商品サービスの説明が多い、参加者が抱える悩みが解決されるようなイメージがわかない、統計データや判例が商品説明の補足にしか使われていないなど、少しでも売り込み感が出てしまうと、相手はすぐに気付きます。社労士の商品は、手続きの代行業務ではなく、コンサルティング業務です。だから、「売る」のではなく、「悩みや問題の解決策を提案する」のが正しい考え方です。
セミナー内容も同じです。まずは“売りたい”という気持ちは置いておき、“見込客は何に悩んでいるか?”を考えましょう。見込客の悩みをリサーチするための方法には、次のようなものがあります。
- 顧客に最近の悩みを聞く
- 同業者に何が流行っているか聞く
- 新聞・ニュースを見る(法改正情報や労働問題・事故など)
- セミナーサイトや同業者のホームページを見る
- 同業者のメルマガやブログを読む
- 官公庁のホームページを見る
特に、顧客から直接聞く声には、かなりのヒントが隠されていますよ。また、もし、これらのリサーチで明らかになった悩みが、あなたの全くの専門外だった場合でも安心してください。それについて話せる人と一緒に、組んでやればよいだけです。
2.コピーライティング
魅力的なコンテンツを考えたら、見込客にその内容がしっかりと伝わるよう、効果的な文章で宣伝をする必要があります。詳しい書き方については、ボリュームが多いので、別の記事でご説明いたします。
3.見込客リスト
見込客リスト=セミナーを告知する相手のリスト、です。どんな人にセミナーに参加してほしいかが決まらないと、広告手段も決まりません。もしくは、ターゲットに届かない広告手法に、無駄にお金を使うことになりかねません。
見込客は、大きく2つに分かれます。
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あなたの知っている人/会社
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あなたの知らない人/会社
です。
「知っている人」とは、既存客以外にも、一度訪問しただけの会社や、交流会等で名刺交換をした方も含みます。もちろん、こちらのほうがあなたのことを知っている相手なので、反応率は高いです。しかし、やはり数が限られます。また、新規顧客を増やそうと思う場合は、「知らない人/会社」へのアプローチが必要になると思います。この「知らない人/会社」のリストを保有している人が誰なのかを、まずは考えてみましょう。
例えば、「建設業界の役員に送りたい」場合は、建設業界のリストを保有しているのは誰か?業界新聞、保険営業、不動産会社、色々と思いつくかと思います。まずはそれらをすべて書き出します。そして、次にそのリスト保有者にどうやって、セミナーを告知するか?を考えます。業界新聞がある場合は、費用を出して新聞広告を出すのが手っ取り早いですが、保険会社や不動産会社の場合は、セミナー参加費やその後のサービス導入をした場合の報酬をキックバック(紹介料として払う)するのも方法のひとつです。
では、具体的にリストを保有している人が思いつかない場合や、キックバック等をしたくないといった場合はどうしましょうか?この場合に、もっとも簡単で一般的なのが、FAXDMや紙DM等の配信代行業者に依頼する方法です。このいわゆる「DM業者」の選び方ですが、価格ではなく、リストの精度という視点で選んでください。業者にFAX送信を依頼しても、全部が必ず届くわけではありません。データの圧縮形式の問題や先方のFAX機の問題、また、会社移転により未達になるものもあります。特に、流行り廃りの激しい業種だと、以前届いたものが現在は届かなくなっている場合もあります。そのため、配信代行業者を選ぶ際には、FAX到達率(送信した原稿のうち、相手方のFAX機が受信完了した件数の割合)をしっかりと確認するようにしてください。
業者によっては、ホームページ内に、「20××年に収集したリストを使用」や「毎月リスト収集している」等の記載がありますので、ご確認ください。また、精度という点では、リストの仕入れルートも確認してみてください。(※教えてくれるかは微妙ですが、、、)多くの業者は、タウンページから仕入れています。タウンページに掲載されている企業は、色々な業者からFAXや紙DMを送られています。その分、到達はしますが、反応率は悪いです。だから、タウンページ以外でリストを収集している業者があればベストです。さらに、業者を選ぶ際にもうひとつ重要なのが、「配信対象から支店や支社、公的機関を排除できるか」です。支店や公的機関に送っても、ほぼ反応がない。か、クレームになるだけです。
ほとんどのDM業者が、こちら側で一件ずつ、目視でチェックして排除しないといけません。これは、下手すると半日の作業になってしまいます。以上のような点に注意して、効果の高い業者を選ぶようにしてくださいね。
4.広告手段(どんな媒体通じて告知するのか)
(1)承諾広告と未承諾広告の違い
セミナー広告手段を考えるうえで、大事な考え方は、「承諾広告」(見込客が自らの意思で見ている)なのか、「未承諾広告」(こちらから一方的に送っている)なのか、ということです。
この2つのメリット・デメリットを比較してみます。
承諾広告のメリット
・クレームがない
承認広告のデメリット
・広告費用が高い
・何社に告知するのかが分かりにくい
・集客(反応)に時間がかかる
未承諾広告のメリット
・すぐに集客結果が分かる
・広告費用が比較的安い
・何社に告知するのかが事前に分かる
未承諾広告のデメリット
・クレームがある
・手段や内容によっては法的制限がある
クレームのことを考えて、「承諾広告」の方が良いと思う方が多いかもしれません。しかし、「承諾広告」は、ある程度のコストと下準備、そして反応(予約)までに時間がかかると思ってください。資金に余裕がある方は、利用を検討しても良いかもしれませんが、目の前の集客に困っている方には厳しいというのが正直なところです。
(2)承諾広告と未承諾広告の種類
それぞれの広告の具体的な種類についてみていきます。ここでは、個人開業の社労士の方が現実的に実施可能なものだけを取り上げます。また、あくまでも、セミナーの告知というに目的に絞った手段です。
Googleアドワーズ
いわゆる検索連動型広告です。
あらかじめ指定したキーワードで検索されたときに、広告として検索結果の画面の上部などに表示されるものです。1クリック数十円とコストが安いのが特徴です。また、Googleで指定ワードを検索した人すべてが見込客になるので、訴求できる見込客の数が多いです。うまく使いこなせると、とても有効な広告手段です。
しかし、管理画面が分かりにくく、検索キーワードの設定も複雑、広告表現のガイドラインについても専門知識が必要なため、詳しくない場合は、広告代理店に任せた方が良いでしょう。
また、広告用の画像と、セミナー予約受付用のホームページかLP(ランディングページ)が別途必要になります。
⇒これについては、「5.受け皿」で詳しく解説します。
Facebook広告
Facebook画面に表示される広告です。
1クリック数十円ほどの低コスト、広告設定管理画面も非常にシンプルで使いやすく、ネット広告の初心者におすすめです。
広告画像や動画があるとすぐにでも広告の掲載ができます。(※審査あり)
私は、もっぱらFacebook広告を使っています。私のメルマガ読者登録も、ほとんどがFacebook広告からの流入です。
Google検索の利用者数と比べると、Facebookユーザー数は少ない分、訴求できる見込客の人数も少なくはなりますが、Googleアドワーズは、既に検索ワードの競争が激化しており、素人ではなかなか効果が出ないので、まずはFacebook広告から始められた方が良いでしょう。
ただし、Facebookユーザーの層にはビジネスマンが多いため、経営者を対象とした労務関係のセミナーなどには効果的ですが、障害年金などのBtoC向けのセミナーなどでは、集客が難しい場合があります。ご自身のセミナーのコンテンツによっても、どの広告手法が最適かが異なりますので、ご注意ください。
また、Googleアドワーズ同様、Facebook広告も、広告用の画像とセミナー予約受付用のホームページかLP(ランディングページ)が別途必要です。
動画広告
YouTube広告や、Facebookの動画広告のことです。最近注目されています。
まだ、始まって間もないサービスなので、YouTube広告の単価も比較的安めです。
YouTube広告の長さは30秒未満で、広告がスキップされた場合は費用が発生しません。30秒以内にWebサイトに誘導するURLのリンクを表示させれば、広告費を浮かせられるらしいです。
ただし、動画広告なので、もちろん、別途、動画を作成する必要があります。
(PowerPoint等で簡単に作成した動画でもOK)
セミナー情報サイトへの掲載
セミナー情報サイトは、無料のものから、有料のものまであります。有名どころで、無料では「こくちーず」が、有料では「日本の人事部」「セミナーズ」などがあります。
無料サイトではほとんど集客が見込めず、有料サイトはそれなりの集客は見込めます。ただ、そこそこの掲載費用はかかります。
セミナー情報サイトは、プル型(見つけてもらえるまで待つ)の広告なので、発見されるのが大変です。人気のサイトだとセミナー情報が数百件掲載されており、その中で自分のセミナーを見つけてもらうのは至難の業です。 大体、掲載初日は、「New」ということでセミナー情報画面の一番上に掲載されるのですが、次の日には、別の会社のセミナーが掲載されています。そして、労力を割いて見つけてもらっても、開催日時が見込客の都合とあわなければ、参加してもらえないのです。そういったところで、セミナーサイトの利用は、単発セミナーではなく、何度も開催するセミナーの場合には、検討しても良いかと思います。また、有料で掲載しているような他のセミナーと並ぶので、ブランディング目的では使えます。
アフィリエイターの活用
有名な方のブログやメルマガで、あなたのセミナーを告知してもらう広告方法です。
“この人が紹介するセミナーなら大丈夫だろう”と、読者(ファン)が安心して申し込みます。
「1名予約していくら」という課金スタイルが一般的で、料金設定は、ファン(読者)の数によって異なります。その読者の属性が、あなたの顧客の属性と合致しているなら、比較的効果の見込める広告です。
誰に依頼すれば良いのか分からない場合は、「まぐまぐ」を見て、読者数が多い方に、直接頼んだり、業界専門のコンサルタントに直接連絡を取って、その顧客にセミナー告知をしてもらったりといったやり方があります。 ただし、必ず相手の顧客属性を確認し、あなたの顧客になり得るかを考えてください。例えば、会社役員を集めたいのに、「副業コンサルタント」に紹介されても意味がありません。また、紹介をお願いする場合には、紹介してくれる相手にも、その読者にもベネフィット(利益)があるようなかたちにしてください。
業界紙への記事掲載
業界紙は、一般的な新聞よりも広告掲載コストが安いです。
でも、私がおすすめしたいのは、お金をかけて単純に広告を載せることではありません。
記事提供の打診をすることです。新聞社も日々ネタに困っているため、「無料で記事を書きます」と連絡をしてみると、意外と興味を持ってもらえることがあります。
提供記事内でセミナー告知が可能であればなお良いですが、セミナー告知ができない場合でも、ブランディングに繋がるのでおすすめです。
フリーペーパー広告
ここでいうフリーペーパーは、路上に設置されているようなものではなく、会社に投函されるようなもののことです。
「ベンチャー〇〇」や「〇〇ビジネス」のような法人向けのフリーペーパーです。
こちらも業界紙と同様、広告掲載費が安いです。私の知り合いは、このフリーペーパー広告を活用して、毎月セミナーを実施していますよ。
ここからは、未承諾広告になります。
FAXDM
見込客(会社)にFAXで告知文を送る方法です。(FAXDMは一般の家庭に送ることはできません)
大体200万社以上の送付先リストを保有している業者がほとんどで、業種・従業員数・地域などターゲットの条件を絞り込んで依頼します。
原稿さえできれば、すぐにでも配信ができるので、これからセミナーをやっていく、初期段階では、告知はまずFAXDMからやるのがお勧めです。
原稿作成してすぐに配信できることに加え、受信した相手の反応もすぐに分かるので、全体的にスピード感があります。(受け取った側が反応するのは、大体FAX配信から3日以内です)
費用の相場は1通あたり約7円です。1通5円という業者もありますが、到達率が悪いので、業者選びの際は注意してください。
私は、以前まではセミナーをやる場合は、FAXDMを利用していましたが、反応率は年々低下しています。昔は、1000通配信すると3社は反応がありましたが、現在は、私の経験則だと、3000~10,000通に3社の反応です。この幅は、原稿次第です。コピーライティングを工夫して原稿を書くと、反応率はかなり上がります。自分の原稿次第で反応率が変わるのも、FAXDMをやる楽しみのひとつです。とはいえ、最低でも1万通は配信した方がよいです。1万通送ると、7万円ほどのコストがかかりますので、独立当初は、仲間の社労士とコラボセミナーを開催して折半していました。
メールDM
FAXDMのメール版です。ただし、以下の点で、FAXとは異なります。
・文字量に制限がなく、しっかりと訴求することができる。
・文字の飾りつけができない。
(HTMLでも配信できるが、ウィルスメールと勘違いされ、開封率が極端に下がる)
・原則、メール配信を承諾した相手にしか配信できない。
(士業の品位に欠けるので、未承諾メールDMは避けた方が良い)
・メールDM業者が少ない。保有リスト件数も少なく、単価も高い。
・FAXDMよりもクレームが少ない。迷惑メールに設定されることはあるが、クレームはほぼ0件)
紙DM
昔ながらの手法です。昔から現在まで使われ続けている手法であるということは、一定の集客効果が見込めるということだと思います。 また、紙DMはクレームがほとんどないため、イメージを壊したくない企業もよく採用している手法です。
FAXと違って、カラー印刷された資料を送ることができることと、封筒であれば、A4サイズ1枚といった制限もないため、届けられる情報量が多いことが特徴です。
ハガキにするか、封筒にするかでコストが大きく変わります。
ハガキの場合:ハガキの制作・印刷費+郵送費@62円
封筒の場合:資料の制作・印刷費+封筒の印刷費+郵送費@82円~
※ハガキも封筒も、既製品を使わず、デザインをするのが一般的です。(かなりインパクトのあるコンテンツでない限り、既製のハガキ・封筒で送るのは怪しまれるので。)
紙DMを実施する際の、最大の壁は、「開封してもらえるか」です。封筒DMの場合、中に入れる資料以上に、いかに開封してもらうかを考える必要があります。以下は、開封率アップのための具体的な例です。
1)封筒をデザインする
会社のロゴや住所が入っている封筒だけでは、インパクトがないので、セミナー告知用に別途デザインしてください。特に、ターゲット名と封筒の中身については、必ず入れてください。「経営者の方へ 会社の経費を30%削減する7つの方法 在中」といった風に、思わず中を見たくなるようなコピーを入れましょう。セミナー告知原稿のキャッチコピーの一部を封筒に印刷するのもひとつです。
2.)景品を入れる
封筒の中に、ボールペンや消しゴム、付箋など、ちょっと使える景品を入れます。封筒の中に出っ張ったものがあり、「何が入っているんだろう?」と開封してもらうのを狙っています。これは、かなりの開封率になりますが、もちろんコストが相当かかります。
ポスティング
BtoCビジネスの集客で使われるイメージが強い手法ですが、最近は法人に限定したサービスをする会社もあります。
大手宅配業者も実施をしており、価格も比較的安くなっています。郵便と比べるとかなり安いです。
配布可能なエリアは限られている場合が多いので、あまり広い範囲の法人には告知できませんが、セミナー会場の周辺でポスティングを行なうと効果が出やすくなります。
テレアポ
非常に地味ですが、反応率は高めです。自分で実施するのはかなり大変なので、業者を使うのが一般的です。ただし、コストは、1件あたり300円前後ととても高いです。そのため、テレアポ先を吟味するために、まずは、FAXDMを配信し、反応の良い地域や業種に絞って、追加のテレアポをする、というような工夫をすればコストが抑えられますし、成果も出やすくなります。
5.受け皿(申込受付の方法や申込者への対応)
ウェブ広告を出してセミナー集客をする場合、申し込みを受け付ける受け皿として、それに特化したサイトを作る必要があります。これには、一般的には、LP(ランディングページ)を使います。
LP(ランディングページ)の見本(私の『11ステップ動画講座』のLP)
https://www.semeru-sr.com/11step-a/
LPでは、途中離脱を避ける為、基本的に外部へのリンクは排除します。そして、上から読み進めると、どんどん購買意欲が高まっていくような内容構成にします。特に、お客さまの声は訴求力が高いので、必ず掲載するようにしましょう。(私のLPではイニシャル表記になっていますが、信用力が上がるので、本当は実名がよいです。)そして、LPの最後に各種情報入力フォームと申込みボタンを設置します。見本のLPは、メールアドレスの収集が目的なのでシンプルな入力フォームになっていますが、セミナー申し込みが目的の場合は、入力項目はもう少し多くなると思います。
ただし、項目が多いと、入力するのが面倒になって、離脱される可能性が高まるので、必要最低限にしてください。