事務所から定期的に顧問先・取引先などに発行されるニュースレターというものがあります。
他の業種と比べると士業の方は、ニュースレターを発行している割合は高いように感じられますが、それに反して、士業のニュースレターは読まれない…という現実があります。
毎月毎月、締め切りに間に合わせるために本業以外の時間を割いて発行しているニュースレターなのに、届いた先ではまったく読まれていない…。
それが本当だとしたら、ちょっと報われないですし、発行している意味が無いですよね。
ではなぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
そのことについて、今回は分析してみたいと思います。
現在、アナタの事務所がニュースレターを発行していて、
1.顧問先や取引先からニュースレターの内容についての質問や相談
2.ニュースレターの記事について、会話でさらに盛り上がること
3.直接顧問先や取引先と接触している担当職員からニュースレターの反響についての報告
これらのことが全く無い。
もしくは、その数が少ないという場合、ニュースレターの内容に何かしら問題があると考えられます。
ずばり、内容がつまらないはずです。
例えば、士業の場合に陥りがちな『読まれないニュースレター』の紙面企画の代表的なものの一つに、
税法などの専門的なハナシ
があります。
専門的なハナシは、士業において一見大事なことのように考えられがちなのですが、その話をニュースレターの1ページ目に持ってきているニュースレターは精読率が下がります。
お客様の大半が、専門知識を知りたいとか、学びたいという意識を持っている場合はそれでも良いのかもしれません。そういうお客様ばかりと取引している事務所では、専門的なハナシを記事にしても成果を感じられていると思います。
しかし、士業といっても大半の事務所の場合、顧問先や取引先の多くが、中小企業や町の商店だったりします。そういった方に向けて、税法や専門的はハナシを毎回毎回書いて発行したところで、相手のほとんどが、
専門的なことを学ぶつもりが無い
もっというと、
そういう難しいことは先生がやってよ
面と向かって言いはしませんが、本音ではそういうように思っている方が少なくないのです。
そんな方々が、専門的なハナシをタメになるからといって読むのでしょうか?
いま発行しているニュースレターの内容は、まさに『豚に真珠』。
でも、それって中小企業や町の商店の方が悪いのでしょうか?
美味しいコーヒーを飲みに行ったその喫茶店で、店主が豆のこだわりや、挽き方、淹れ方についてあーだこーだと喋ってきたら、面倒ですよね(そういう店も少なくないですが…笑)。
さらに、お会計の際に渡されたニュースレターに豆についてのこだわりがびっしりと1500文字書かれていたら読みますか?
もし読むとしたら、コーヒーについてもっと極めたいというごく一部のマニアだけになってしまいます。
自分は美味しいコーヒーを飲みに来ていて、その美味しいコーヒーにお金を払っているだけなのであり、美味しく淹れるとか、マメの勉強は店のほうでやってよ。
と、そう思うはずなのに、いざ自分の仕事になると、その喫茶店の店主のようになってしまう。それが、専門的なハナシをニュースレターのトップに持ってきている事務所が陥っている状態なのです。
専門的なハナシを載せてはいけないのではありません。ページ配分が間違っている事務所が多いということなのです。
「専門的なハナシをたくさん聞きたい」という取引先がほとんどの事務所の場合は、紙面の1ページ目のままで構いません。
しかし、取引先の多くが、先述したような中小企業や町の商店の方で、専門的なハナシは学ぶ気はないだろうな…と思える事務所の場合は、専門的なハナシは2ページ目以降にこっそり掲載するのが良いのです。
ニュースレターは、知識をひけらかす場でも無ければ、教育する場でもありません。基本、無料で郵送や手渡しするものであり、
ニュースレターの目的は、
コミュニケーションをはかるためのもの
であり、
相手との距離を縮めるためのもの
なのです。
それなのに、求めてもいない相手に、教育や知識を強要するような内容を1ページ目にこれみよがしに掲載するというのは、相手との距離を縮めるどころか、距離を遠ざけてしまう可能性があるのです。
ニュースレターを発行すればするほど、取引先との距離が離れて行く…
ということだってあるのです。
というか、多くの士業のニュースレターがそのような状態になっているのが事実として日本全国で起きています。
もし、ニュースレターを発行しているのに、顧問先や取引先からの感想が無いとか少ないという場合や、職員が担当している顧問先からニュースレターの感想の報告が無い場合、一度内容を見直してみてください。
最悪な場合は、担当職員と取引先が現場で、
職員「すみません。毎回、小難しい内容のニュースレターを送っていて……(汗)」
取引先「いえいえ構いませんよ。でも、ぜんぜん読んでないですけどね(笑)。」
なんてやり取りをしているかもしれません。
ぜひ、思い当たるフシがある方は、紙面の内容の見直しをしてみてください。